
こんにちは、DJ宇奈月です♪
私は今、DDJ-FLX4を使ってDJをしていますが、DDJ-200やCDJ-800、TechnicsのSL-1200なども過去に使ってきました。振り返ってみると、ずっと日本のメーカーの機材を使い続けてきたことに、今さらながら気づきました。
普段何気なく使っているPioneer DJのCDJやDDJシリーズ、実はPioneer DJが日本で生み出してきたDJ機器だということをご存知でしょうか。今回は、日本のDJ機器メーカーが世界のDJ文化にどれほどの影響を与えてきたのか、その歴史を振り返ってみたいと思います。単なるメーカー紹介ではなく、「日本の技術ってすごかったんだな」と少し誇らしい気持ちになれるような話をお届けします。
Technics SL-1200|レコード時代を支えた”基準機”
DJの歴史を語るうえで欠かせないのが、Technics(テクニクス)のターンテーブル「SL-1200」です。
1972年に発売されたSL-1200は、1970年に登場した業務用機「SP-10」の技術をもとにしています。このSP-10は世界初のダイレクトドライブ(直接駆動)方式のターンテーブルとされており、SL-1200はその技術をより身近な価格で実現した製品でした。
1973年、ニューヨーク・ブロンクスでKool HercというDJが2台のターンテーブルを使い、レコードの同じ部分を繰り返しかけて観客を沸かせたことが、後のヒップホップDJカルチャーの原点になったと言われています。その後、Grandmaster FlashやAfrika Bambaataaといった初期のヒップホップDJたちにも、手頃な価格だったSL-1200が広く使われるようになりました。
1979年発売の「MK2」では耐振動性や操作性が向上し、「音楽を再生するだけの機器」から「スクラッチなどの表現に使う楽器」へと役割が広がっていったとも言われています。1980〜90年代にはハウスやテクノ、アシッドジャズとともにクラブシーンに根付き、DMCなどのDJバトルを通じて「ターンテーブリズム」という表現方法そのものを支える存在になりました。
累計出荷台数は、1972年から2008年の「MK6」までで約350万台。2010年に一度生産を終了しましたが、2016年に復刻版「SL-1200GAE」が登場し、2019年には現行モデル「MK7」として本格的に復活しています。
私自身、DJを始めた頃にこのSL-1200を使っていました。今振り返ると、あの頃触っていた機材が、世界中のDJ文化の土台を作った機材だったのだと思うと、感慨深いものがあります。
Pioneer DJ(現AlphaTheta)|CDJがDJのスタイルを変えた
レコードの時代を支えたTechnicsに対して、DJのスタイルをアナログからデジタルへと大きく変えたのがPioneer(現Pioneer DJ/AlphaTheta)です。
1994年、Pioneerは世界初のフラットトップ型DJ用CDプレーヤー「CDJ-500」を発売しました。ターンテーブルのような感覚的な操作性を、デジタルのCDプレーヤーに持ち込んだ製品でした。
翌1995年には、自社初のクラブ用ミキサー「DJM-500」を発売。Pioneer DJ公式ブログによると、これは業界初とされるBPM連動のエフェクトセクションを搭載し、業界初の4チャンネル・タテ型レイアウトを採用した製品で、この基本設計は現在のPioneer DJミキサーすべてに受け継がれているそうです。
2001年発売の「CDJ-1000」でスクラッチプレイに対応し、2006年前後の「CDJ-1000MK3」では直感的なCDスクラッチが可能になりました。これ以降、CDJとDJMのシリーズは世界中のクラブの標準セットアップと言われるようになっていきます。今CDJ購入を検討している方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
会社としては、2015年3月にパイオニア株式会社から事業分離して「Pioneer DJ株式会社」が発足し、2020年1月1日に「AlphaTheta株式会社」へ社名変更しました。正直に言うと、私自身も「AlphaThetaって最近よく見る名前だな」とは思っていたものの、これがPioneer DJの新しい社名だと知ったのはごく最近のことでした。同じように感じている方も多いのではないでしょうか。今お使いのDDJシリーズやrekordboxも、現在はこのAlphaThetaというブランドのもとで作られています。
私が今メインで使っているDDJ-FLX4やDDJ-200、それに以前使っていたCDJ-800も、すべてこの流れの中で生まれてきた機材です。機材選びで迷っている方は、こちらの比較記事もあわせてどうぞ。
Vestax|今は無き、コントローラー文化の生みの親
3社目に紹介したいのが、Vestax(ベスタクス)です。すでに現行メーカーとしては存在しませんが、DJ史を語るうえで欠かせない日本メーカーだと思っています。
Vestaxは1977年創業。1981年からDJミキサーの製造を始め、1989年には「世界初の7インチ幅DJミキサー」とされる「PMC-05」を発表しました(WIRED誌のインタビュー記事より)。それまでのミキサーよりコンパクトな、いわゆる「バトルミキサー」というジャンルの先駆けとなった製品です。
創業者の椎野秀聰氏は、毎晩のようにクラブに通い、DJブースの最前列でDJの手の動きをずっと観察していたそうです。そうして生まれた製品は「DJがかゆいところに手が届く」ものばかりだったと伝えられています。1987年からはDJバトルコンテストも主催し、世界中のDJシーンと直接つながりを持っていました。
2001年発売のターンテーブル「PDX-2000」は、針飛びを防ぐアンチスキップ機構を備え、Q-Bertのような世界的なスクラッチDJにも愛用されました。
そして2006年発売の「VCI-100」。これはDJソフトと連動して使う、プロ仕様のUSB MIDIコントローラーで、海外メディアのDigital DJ Tipsが「the controller that started it all(すべての始まりとなったコントローラー)」と評するなど、今の「DJコントローラー」というジャンルそのものの原型を作った製品と言われています。今、私たちが当たり前のように使っているDDJシリーズのようなコントローラーも、たどっていくとこのVestaxの発想に行き着くわけです。
しかし、音響機器市場の変化や価格競争の中で経営が厳しくなり、Vestaxは2014年12月に破産しました。今の若いDJの方の中には、Vestaxという名前を知らない方もいるかもしれません。それでも、なくなってしまったからこそ、この機会に知っておいてほしい日本メーカーです。
私自身も、Vestaxのミキサー「PCV-180」を使っていたことがあります。当時は「日本メーカーのDJ機材を使っている」という意識はあまりなかったのですが、今こうして歴史を振り返ると、当たり前のように選んでいた機材が、実はDJ史に残る日本製品だったのだと気づかされます。
番外編:DJがかける”音楽”そのものを生んだ日本の楽器
ここまではDJ機材そのものを作ってきたメーカーですが、DJが実際にかけている音楽そのものを生み出した日本メーカーにも触れておきたいと思います。
Roland(ローランド)が1980年に発売したリズムマシン「TR-808」は、発売当初は決して売れ行きが良かったわけではありませんでした。しかし、YMOやAfrika Bambaataaなど国内外のアーティストに使われたことをきっかけに評価が広がり、今では”世界一有名なリズムマシン”とも言われるほど、ヒップホップやダンスミュージックの土台になった音源として知られています。1983年に発売された後継機「TR-909」も、80年代後半以降のハウスやテクノに欠かせないサウンドとして、今なお使われ続けています。
DJ機材そのものではありませんが、これらがなければ、私たちが普段クラブでかけている曲の多くはそもそも存在しなかったかもしれません。
また、DJのライブパフォーマンスという観点では、KORG(コルグ)が1999年に発表した「KAOSS PAD」も外せません。パッドの上を指でなぞるだけでエフェクトをリアルタイムにかけられるという直感的な操作性は登場時に大きな話題になり、DJやライブパフォーマーの表現の幅を大きく広げました。
DJを支える名脇役たち:audio-technicaとTASCAM
DJ機材というと、コントローラーやターンテーブル本体に注目しがちですが、それを支える周辺機器の分野でも、日本メーカーは大きな存在感を持っています。
audio-technica(オーディオテクニカ)は1962年創業。もともとはレコード針(カートリッジ)の専門メーカーとしてスタートし、独自のVM型カートリッジで世界的に高い評価を得てきました。1974年からはヘッドホン市場にも参入し、現在ではDJ用ヘッドホンの定番ブランドの一つになっています。
そしてTASCAM(タスカム)。TEAC株式会社(1953年創業)の音楽制作向けブランドで、もともとはレコーディング機材で知られるメーカーですが、DJ用の2chスクラッチミキサーも手がけていました。実は私自身、DJを始めた頃に「TASCAM XS-3」という2chミキサーを使っていました。当時は「録音機材のメーカーがDJミキサーも作っているんだ」くらいにしか思っていませんでしたが、今振り返ると、こうした縁の下の力持ちのような日本メーカーにも支えられていたのだと感じます。
日本人DJとして、あらためて感じること
YouTubeなどで海外のDJのプレイ動画を見ていても、Pioneer DJの機材をよく見かけます。実際に海外でも、日本と同じようにこれだけ使われているんだと思うと、率直にすごいなと感じます。
また、私が日本のクラブやバーで見てきた範囲では、使われている機材はほとんどが日本メーカーのものでした。最近は家電製品も海外製、特に中国製のものが増えてきている中で、これは私にとってあらためて驚くポイントでした。
それから、20年前に買ったようなCDJやミキサーが、今でも普通に現役で使えているのを見ると、機材としての「持ちの良さ」も感じます。
まとめ:日本の技術が、世界のDJ文化を裏側で支えてきた
Technics、Pioneer(現AlphaTheta)、Vestaxという3社を中心に、Roland、KORG、audio-technica、TASCAMといった機材・周辺機器・音楽そのものを支えたメーカーまで振り返ってみると、日本のメーカーが世界のDJ文化の様々な場面を支えてきたことが見えてきます。
「日本製だから優れている」と単純に言いたいわけではありません。ただ、普段何気なく使っているDJ機材のルーツをたどってみると、そこには日本のメーカーや技術者たちの積み重ねがあった、という事実は、DJをする一人として、素直に誇らしく感じます。
これからDJを始める方は、こちらのロードマップ記事もぜひ参考にしてみてください。すでに機材をお持ちの方も、ぜひ一度、自分の使っている機材のルーツを調べてみてください。きっと新しい発見があるはずです。


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